萩往還ヘッダ
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ダンスマン。「宇平」。
 みなさん、三連休をいかがお過ごしですか?エキチョーです。

就職してこのかた、30年近く「物を売る」仕事をしています。

「売る」ためには、さまざまな企画が必要で
イベントをしたり、販促物を作ったりもそのひとつ。

商品構成を決めるバイヤーとしてのセンスや
店舗のディスプレイ、ホスピタリティの充実も不可欠です。

また、競合店との「差別化」も大切。

「何で戦って、何で戦わないか」

楽しい仕事です。

さて、そんな経験をしてきて、思うことがあります。

「女性が踊るキーワード」です。

食品販売に関して、いくつか挙げてみます。

ご覧くださっている女性のみなさん。いかがですか?

●「限定品」
ぐっときませんか?
例えば「5,000本限定」とかありますね。
1アイテムで5,000本売れれば、おおむねヒット商品です。

●「新物」
季節感のある食品で有効です。

●「ポイント5倍」
5%のポイントのケースがほとんど。

●「自分へのご褒美」
贅沢品を購入する際の決断キーワード。

●「生」
生キャラメル、生チョコなどいろいろ。

●「刺身用」
魚介類に書いてあると、鮮度抜群の印象。

●「無添加」「無農薬」
健康志向の方に限らず、反応します。

●「閉店セール」
ちょっとした改装だけなのに、多用する業者あり。


世の中は、「売る人」と「買う人」の二通り。

「売る人」は、いろいろ考えます。

さて、ここまでは主に女性の話。

男性が反応するキーワードがあります。

「公式」です。

その「公式」というキーワードに食いついてしまい
これを買いました。
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▲購入したもの。

これは、お酒を飲むための「ぐい呑み」です。

「利き猪口(ききじょこ・ききじょく)」といいまして
日本酒の鑑評会などで、テイスティングするための専用酒器です。

白い磁器にクッキリと浮かぶ青い蛇の目は
お酒の色を確認するためのもの。

大きさは、1合(180ml)用で、かなり大きめ。
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▲一般的な湯呑より、さらに大きな印象。

「ああ。これなら知ってる。居酒屋さんとかであるよね。」

と、思われた方。

ちょっと違います。

この利き猪口には、大きく分けて
「本きき」と「呑みきき」の2種あります。

「本きき」とは、「公式」に使われるもので
国税局の新酒の鑑評会等で使われるもの。

大きさは、1合と決まっていて、器体が薄く
青い蛇の目が手書き。

その蛇の目の上に、透明の釉がかかっていないため
青い部分が盛り上がり、境目がはっきりしています。

触ると凸凹しています。
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▲青い部分が盛り上がっている。

一方、「呑みきき」とは、見た目は同じですが量産品。

大きさも様々で、器体が厚く丈夫なため
居酒屋さんなどで使われます。

青い蛇の目はプリントで、さらに透明釉が上からかかっているため
触ると「つるん」としています。

値段は、「本きき」が1客数千円するのに対し
「呑みきき」は数百円。

ぜんぜん違います。

さらに、「本きき」とされる利き猪口にも数種類ありまして
器の底の「銘」が違います。

菱の中に加という字のある「菱加」や
「幸泉窯」と、窯元の銘があるもの。

そして「宇平」。
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▲「宇平」の本きき。

「宇平」印の本ききは、入手困難で
インターネットでもプレミアム価格で販売されています。

国税局の鑑評会の「公式」が「宇平」といわれます。

ただ、先日、とても日本酒に詳しい方とお話したろころ
「国税局だって、地域ごとにたくさんある」
「いったいぜんたい、どこの国税局の公式なのか?」

はい。まさにその通り。

全国すべての国税局の日本酒の鑑評会で
いちいち猪口の裏を確認したわけではないので
「菱加」や「幸泉窯」、あるいは別の利き猪口を
公式に使っている国税局があるかもしれません。

「公式」の2文字に、ついつい踊ってしまった
ダンスマンなのかもしれませんね。

私。

ただ、どっちにしても、これで「夏限定」の
萩の地酒が美味しく飲めるのも、事実です。
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▲当駅の酒コーナー。

「夏」「限定」。

ウナギの白焼きを食べながら、冷酒をキュ!

たまりませんわ。


道の駅 萩往還
駅長 篠原 充








| 「ぐい呑み」コレクション。 | 11:45 | comments(0) | - |
内村慎太郎。氏の「道」。

古陶磁に憧れ、朝鮮・李朝そして桃山時代のやきものに陶酔し
この道に入りました。
遥か昔、高麗陶磁が日本人特有の美意識に見出されたように
その受け継がれてきた感覚を大切にし、多くの方々に感動していただける作品を
生み出したいという一心で、李朝・高麗・唐津を中心に作陶しております。
其の想いが伝わりますことを切に願います。

雷山房HP 内村慎太郎氏の挨拶文より

先日、唐津焼の新進気鋭作家、内村慎太郎氏の山居窯を訪ねた。

窯は福岡県糸島市と佐賀県佐賀市にまたがる脊振山系に属する
雷山(らいざん)の中腹にあった。

雷山は、山全体に雷神が鎮座すると考えられたことから
この名がついたそうだ。

当日は、梅雨入り前だったが、空から小さく柔らかな雨粒が
一日絶え間なく降り注いでおり、それが新緑の翠を際立たせ
山麓の清廉な滝に水を注ぎ、苔むした黒い大岩を洗っていた。

氏とは、広島の個展で偶然出会い、今回の訪問が二度目の面会。

抹茶の接待を受け、歓談した後に、いただいた酒器を紹介する。

どれも「唐津焼」を代表する手法の酒器。

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▲「朝鮮唐津」たちぐい呑。

朝鮮唐津とは、黒釉の上に、藁灰釉をかける技法。

焼成時にこの二つの釉薬が絶妙に交わる景色がみどころ。

藁灰釉は白色系の色を呈するが、これが山吹や青みがかった
多様な色に変化する。

仕上がりの加減が非常に難しく、本作は、40客窯にいれた内
唯一とれた1客との事。

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▲見込み。

斑(まだら)模様と、ふりかった灰が色を呈している。

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▲高台付近。

氏いわく、流れた釉が「黒曜石」のように美しいとの見方。

続いての作品はこちら。
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▲「井戸」盃。

井戸茶碗とは、深く大振りな器で、器体は琵琶色。
高台の付近の生焼け状の「梅花皮(かいらぎ)」など、お約束がある。

陶磁器(土器や土偶を除く)の国宝は、15点しかないが
朝鮮李朝時代の大井戸茶碗(通称:喜左衛門井戸)は
その1点の大名物として有名。

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▲「梅花皮」。

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▲見込み。

石爆(いしはぜ=焼成時、小石がはじけた部分)が数か所。
うっすらと、白い目跡も確認できる。

轆轤目の品格よし。

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▲「黒高麗(くろごうらい)」。たちぐい呑。

落ち着いた艶消しの黒に、さまざまに色景が潜伏する。
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▲翠を呈した口縁〜見込み。

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▲高台付近。

フランスブルゴーニュの濃い赤ワインのようなバーガンディー。

奥から、焼きあがった新作を含め、ぐい呑だけで
40客〜ほど見せていただいた。

「お値段は、お任せします。」と、この3客を前に出した。

正直、驚くほどの廉価で譲っていただいた。

ちょっとした寿司店で、酒呑み2人で1通り楽しむほどの値段。

氏は、1975年生まれ。37才。

「道の途中」と、謙遜されたのか。

芸術には、様々な「極地」が存在する。

整然とした調和の「極地」。
大胆なゆがみやひずみの「極地」。

圧倒的な存在感の「極地」。
ひそやかなささやきの「極地」。

私は内村慎太郎氏のやきものに
作為の外に出現する「ゆらぎ」を感じる。

「ゆらぎ」は、私の最も好きな芸術の「極地」のひとつである。

(追記)
後日、共箱を誂え、令状と共に作品が送られてきた。
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| 「ぐい呑み」コレクション。 | 19:01 | comments(1) | - |
私の「ぐい呑み」。part.1
みなさん、こんにちは。エキチョーです。

昨日、一昨日と、東広島〜広島に行ってきました。

安芸津、竹原、西条の酒蔵見学が主体の視察で
いったいぜんたい、どれだけ酒を飲んだかわかりません。

同行していただいた「酒の違いのわかる男性」は
初日午前に訪問した一軒目の酒蔵からエンジン全開。

車中に酒の匂いが充満。

私は運転でしたので、宿の駐車場に着くまでは
「酒好きが飲めない・飲んではいけない」という拷問を体験しました。

2日目の広島では、百貨店で開催中の
「魯山人」の企画展を鑑賞。

ゴッホやピカソを欧州で初めて観たときと同じ
破格のスケールの美を楽しみました。

そして、本日道の駅に、ある小包が届きました。

先月末、広島で買った唐津焼のぐい呑みです。
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▲到着した箱。

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▲皮鯨 ぐい呑 慎太郎 と、書いてあります。

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▲開けてみる。

とても丁寧に梱包してあります。

作者は、内村慎太郎氏。

唐津焼の新進気鋭の若手作家です。

古陶磁に憧れ陶酔し、この世界に入られたそうです。

たまたま広島の百貨店の催事場で目にし
モデルのようなご本人と、美しい奥様のお二人から
直接購入しました。

その作品がこれです。
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▲皮鯨 ぐい呑

皮鯨(かわくじら)とは、口縁に黒い釉薬をかけ
文字通り、鯨の皮のような配色の
唐津の伝統的な手法のひとつです。

古い唐津の皮鯨は、黒の線が細く表現してありますが
本作は厚めで、斜めに降りたアクセントがとてもモダンな印象を受けます。

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▲口あたりの最も良さそうな部分。


▲反対側。

むしろ枇杷色が黒を強調する。

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▲高台周辺。

こちらにも、釉(うわぐすり)が縮れたような
伝統的な唐津の景色が見事に出ています。

梅花皮(かいらぎ)と云います。

唐津と萩は、どちらもルーツが朝鮮半島で
いわば兄弟のような焼き物。

萩焼にも、梅花皮の技法が用いられています。

左には、灰被りの景色も出ています。

見込みをみてみましょう。
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▲荒い砂石がところどころに顔を出す、良い景色。

控えめな淡い枇杷色が、酒を注ぐと明るく際立つ。

細かな貫入(ひびわれ)が、使い込んでいくうちに酒が滲み入り
成長し、枯淡の風情も見せてくれそうです。

(追記)
作品に、内村慎太郎氏の礼状が添えてありました。
DSC_5853.JPG
▲達筆。

感激。




| 「ぐい呑み」コレクション。 | 18:23 | comments(1) | - |
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